Letter From Yosuke


2016年


1月1日|2月1日|3月2日|3月27日|4月27日|5月27日|6月21日|7月21日|8月15日|9月13日|10月12日|11月7日|12月6日|




12月30日

光陰矢の如し。 みなさんにとっての2016年はどんな年だったでしょうか?
僕は音楽活動の場や人の波が、それまでの数年間から大きく変化して、
自分のキャパシティに対するチャレンジの大きい年になりました。
色々と苦労はしましたが結果として今まで以上に動き回り、
その分、成長も出来たのではないかと思える年になりました。
その中で新しいアルバムが制作できたことも大きな喜びの一つです。
また、新しい活躍の場をくれた大西順子さん、吉田美奈子さん、佐藤竹善さん始め、
数多くの書ききれない多くの人々に感謝したいと思います。
そして長年、活動をともにしている渡辺香津美さんの45周年記念ライブを始め
いろんなステージに立たせていただきました。
また、僕の地道な活動にも参加してくれた多くのミュージシャンにも感謝しております。
僕がこの数年間挑んでいる、音楽が音楽以外の付加価値の方が大切にされる歪んだ状態から
音楽の世界のリアリティーを取り戻す闘いに、少しでも共感していただけた感触がとても清々しいです。
共演者同士がそれぞれにこの世に二人といない、代えのきかないかけがえな存在と意識できる場所にいる事が幸せです。
年齢による体力の衰えに抵抗しつつも、まだまだ力を振り絞って活動を続けていきたいです。
ミュージシャンは日々の演奏の中から何かを生み出すことに命をかけております。
それが大きな舞台でも小さな舞台でも変わらない気持ちの一つです。
聞きに来ていただきた人、録音などを通して聴いてくれる人に幸せな気分を味わっていただきたいのです。
世の中は争い、災害が絶えなく、世界の情勢も見通しは決して明るいものではありません。
持てるものと持たざるものの格差が広がっていくことが不幸の原因だとわかっているのにもかかわらずです。
音楽家は無力で自己中心だと厭世的になりがちですが、まだまだ出来ることはあると思います。
人の心に灯火を。来る年が希望に満ちた年でありますように。




12月6日

あれ、もう12月! ついこの間、年末だ!クリスマスだ、正月だ!と言っていた気がするのに。
という感覚になってはや、何十年、これが、人生というものか、加齢というものか
わかりませんが、同じ生きるなら楽しまなくては!
師走の季節ですが、皆様は体調など崩していませんか?
僕は毎年、この時期はお祭りさながらに賑やかな仕事が多く、
その分移動も激しく体調を崩しそうなものをなんとかこらえて頑張ります。
今年も佐藤竹善さんのクリスマスツアーに参加させていただき、
ジャズやポップスという枠を超えた音楽の深さに身を浸しております。
竹善さんの選ぶ曲の良さは絶品ですが、その詩の深さに毎年、感銘を受け、考えさせられるものがあります。
詩の世界に広がる風景や情感、そんなものを忙しい現代人は忘れがちですが、
良い人生を生きるためには必要な栄養素だと思います。
時には手を休め、音に乗った詩の祈りのようなものを感じてはいかがでしょうか?
いよいよ新しい自身のアルバムの制作も大詰めに入ってきました。
完成形のビジョンが見えるたびに興奮します。
持てる愛情をすべて注ぎ込んだアルバムなので、皆さんの手元に届いて楽しみに愛されることを願っています。
そして皆様の人生の癒しになり、時には暗闇を照らす灯台のように指針となれば幸いです。




11月7日

新しいアルバムの録音が無事に終わりました。
まずは、前作を応援していただいたすべての皆様に厚く御礼を申し上げます。
自分自身、前作が久々のアルバムの発表で、しかも、内容も今までにはない
新しいジャズの音楽像を目指したので、こんなに早く次の作品が作れるなどとは思っていませんでした。
アルバムをリリース後、レギュラーメンバーとしていろいろなところでツアーをやり
ライブやコンサートを重ねていくうちに
このバンドで目指した方向が、皆様に愛して頂けるに値するサウンドではないかと
少しずつですが自信を深めていたのは確かでした。
自分を含めメンバーもそれぞれが成長するきっかけになったのではないかと
こんないい年をしてなんですが、まだまだ挑戦できる事に喜びを得ています。
今回のレコーディングでは前作で目指した、音楽の人間性の復興と
より深い音の交わりを、いろんなグルーブに乗せて
暖かく、楽しく聞ける路線をさらに発展させることが出来たのではないかと思います。
改めて、秋田慎治、江藤良人、荻原亮のメンバーの素晴らしいサポートに感謝します。
そして日々の生活に喜びを与えてくれる家族や友人たちにも感謝を。
さらに今回はゲストに大西順子さんが一曲参加してくれました。
火の出るような演奏のイメージの彼女ですが、バラードの名手でもあり
今回は長年の共演で素晴らしいと感じていたバラードをデュオで演奏して収めました。
アルバムにより深みが出たのではないかと思います。

こうやって生きている間に8枚のアルバムを作れたことは奇跡のように感じます。
日々、ライブや録音など、いろんな人といろんな形で関わってきましたが
どれも精一杯、心を込めて演奏してきたご褒美のような気がします。
人間ですから浮き沈みは必ずありますが、後世に続く音楽形に
こんな僕でも夢と希望を持ち続ければ、こんな素敵な体験ができることが伝わりますように。
音楽とは形も味も色もないものですが、何か人間としての根元のところで
深く滋養となって必要とされる養分ではないかと思います。
そのためには栄養価のたっぷりと含んだ音楽を作り出さなくてはなりませんね。

毎日のいろいろな出来事に感謝を込めて。




10月12日

今年は行くところに随分と台風がついて回っているような年です。
9月半ばには徳島空港から東京に戻る予定の便が欠航に。
それもそのはず、直撃でした。
空港までたどり着いたものの、当然、従業員以外は誰もおらず、
7時間後の次の便に乗り換えることとなり
期せずして空港が貸切状態になりました。
これ幸いにと、新作のアルバムのために書きかけていたオリジナルの曲を
じっくりと完成することができました。
何度かライブでは披露しましたが、次のアルバムへの手応えを感じました。
その台風はその後のニュースで、いろいろなところに甚大な被害を及ぼしたようで
被害を受けた方の一刻も早い日常生活の復帰を祈ります。

ジャズの歴史を作られた方々とお会いしたり、話したりする機会はこれまでにもありました。
その度に、ジャズという音楽の本質や魅力、そして一流の人が持つ独特のムードなどを感じてきました。
先日は、ちょっとしたきっかけでチック・コリアさんとじっくりとお話できる機会を得て
さらに、彼の音楽と透徹した思考を肌で感じることができてとても幸せでした。
もちろんライブも拝見することができましたが
今年で75歳、衰えを知らぬ演奏とインスピレーションの切れ味は凄まじいものがありました。
素晴らしい出会いを取り計らっていただいた小曽根さんには感謝でいっぱいです。
同時期にニューヨークの街とジャズシーンを体験したベーシストのアビシャイコーエンさんにも再会できて
これまた、いろんな話を聞けて嬉しかったです。
本やCD、インターネットなどの情報も良いけど、
何より会って話すことで知ることのできることの大きさは比べものにもならないことを
久々に感じ、これからはもっと積極的に人に会いに行こうと思いました。

そして新作に向けた動きが活発になってきました。
新しいアレンジや新曲のお披露目の場のようにもなってしまったトリオや
秋田慎治くんとのヂュオのライブも手応えをがっしりと感じました。
ただ、格好が良いとか、新しいとか、正しいとか、美しいとかではなく
人間というものがもっと深く感じることのできる音楽
そしてそれが聞き手の奥深くまで入って行き、なおかつとても楽しい。
そんな音楽が作りたいのです。

そんな中
先日、車で某文化会館に行ったところ、出演者の駐車場ではなく、一般の駐車場に入ってしまった。
守衛さんに言って、いったん一般の駐車場から出て、関係者の駐車場に行きたい旨を告げると、
「ああ、芸人さんですね〜!いつも見てますよぅ」と言われた。誰に間違えられたのだろう?
芸で食べているので芸人とも言えなくないのだが…
よし、芸を磨くぞ!

追伸・このレターを書き終えた後に宮本大路さんの訃報が入ってきました。
SNSなどには投稿が溢れかえっていて、投稿せず静かにするのも追悼の一つかと思い
ここに追悼の意を表しておきます。
レターにも書いたように、聞く人を楽しませ、感動させ
そしてユーモアもあり、奥深くもある音楽を大路さんは目指していたと思います。
今の日本では稀有な存在であり、それを実現することの出来る実力とインテリジェンスを備えていた方でした。
いつ会っても暖かく、優しい眼差しで迎えてくれた姿は後輩に接する時の目指す姿です。
今は静かにご冥福を祈るとともに、その意思を受け継ぎたいと思います。
大路さん、お疲れ様でした。


9月13日

オリンピックフィーバーから抜け出して日常というものが戻ってきたこの頃。
思わぬ連続台風の影響で大変な思いをされたかともたくさんいるのではないかと思います。
どうか健やかに過ごせる日々が皆様の元に訪れますように。

この日本という東アジアの国に住んでいれば毎年の事で
夏から秋にかけて当然のようにやってくる台風ですが、
幼き日からの記憶とは違うコースをたどっている気がします。
地球の営みのどこかが歪んできているのでしょうか?
自然を前にすると人間は無力で小さな存在です。
人の心の中にある万能な気持ちも、一気に崩れていきます。
自然災害などは痛ましい爪痕を残しますが
自然を支配するのではなく、共存するという気持ちを持つことが大事なのではないでしょうか。

この世に生まれてきた偶然というものも素晴らしいことです。
命がある限り大切に使いたいものですね。

この年齢を迎えてもたくさんの方々に演奏するチャンスをいただけて幸せです。
素晴らしい若いミュージシャンの台頭もとても頼もしいものがあります。
共演することで学ものも多く、自分がこれまで積み重ねてきたものも
彼らのおかげで新しいものに変えて行ってもらっている気がします。
未来だけでなく過去も変えられる、なんて素敵なことだと思いませんか。
(この言葉は平野啓一郎さんの本からの受け売りです)

新宿ピットインで行われた、吉田美奈子さんのライブ。
ピアノとベースと歌だけというシンプルな編成ですが、
深く、分厚く、心を揺さぶる音楽を創っていくステージには
共演者としても感銘を受け、同時に誇りに思いました。
音楽がどんどん痩せ細っていっているように思われるこの時代に
真正面から切り込んでいくような姿勢がとても素敵です。

そして日本ではあまり話題にはなりませんでしたが
9・11が過ぎて行きました。
世界はあれから平和になるどころか、ますます混迷を極めているように感じます。
一人一人の力、それしか世界を変えていく道はありません。
隣の人を、そばにいる人を、遠くにいる親しい人、心に触れ
厳しいながらも優しさと、現実をしっかり見つめながら夢を語る
そんな社会にしたいと微力ながら思います。

新作への録音に向けて、色々と構想を練っております。
みなさんの魂が元気付けられ、一本通った厳しさの中にも勇気と優しさが溢れるような
それでいてリラックスして楽しめる作品にしたいです。
さらに今回はルーツであるジャズのスイングやファンクのグルーブ
日本人であることの感性などにもフォーカスを当ててみようかと思っています。
録音が楽しみです。是非、完成したあかつきにはたくさんの人に聞いてもらいたいです。
そのためにも過ぎ去っていく一瞬を大切にしたいと思います。


8月15日

毎年、夏の暑い中にこの日がやってきます。
どうして人間は憎しみ合わねばならないのか、人の命は何なのか考えさせられます。
終戦という言葉もそこで憎しみの鎖が断ち切れるわけではなく
その後、あちらこちらで連鎖を繰り返している、これが世の中の現実です。
平和を!と叫びながら、他人の悪口を言い、人を貶めて自分だけが得をする
そんな考え方が蔓延しているような気がします。
平和を!と叫びながら、対戦ゲームなど、人がバタバタと倒れていくゲームに熱中し
派手なアクションでバタバタと人が倒れていくシーンに快感を感じている
そんな歪んだ心根を人々は持ち続けているのではないか。
人間という物をもっと深く考えなくてはこの終戦記念日も意味の軽いものになってしまうと思います。

それとは別の次元の話ですが、
連日のオリンピックフィーバーに興奮の毎日です。
僕自身、子供の頃に水泳をやっていたことがあり、
スイミングスクールの選手育成コースでバタフライが専門でした。
小学校6年生の時に2つ大会に出て金メダルを獲ったこともあります(えっへん、過去の栄光。自慢)
なので水泳の競技を見ていると興奮します。
スタート台に立った時、スタートの合図がなる時、飛び込んだ瞬間、水面に上がる瞬間、
隣のコースの泳ぎ、ターンのうまく行った時、ゴール前での足が動かないこと、などなど。
それはそうと、1996のアトランタオリンピックの時に公式スポンサーのイベントでアトランタに行き
ハンクジョーンズさんと演奏させていただきました。僕の心の中の金メダルです。

そして各地で行われる催しに出演させていただき
微力ながら人の喜んでいただく顔が見れることが幸せです。
イチローさんのアメリカでの3000本安打(素晴らしい記録)の時のコメントが
自分が何かすることで他人が喜んでくれるのが嬉しい、というのがありますが
当たり前のようで経験を積まなければ言えない重い言葉です。
ぶれることなく邁進する人の素晴らしさ。
そんな人々が世の中を平和にするのかもしれません。

追記。
僕のファーストアルバムをプロデュースしてくれ、
日本ジャズ界においてとても重要なプロデューサーであった木全信さんが逝去されました。
僕のニューヨーク在住時代にはいろいろな仕事を手伝わせていただき
音楽をプロデュースすること、ビジネスのこと
その他様々なことをそばで学ぶことができました。
豪奢な性格と歯に衣を着せない言動で、常にエネルギー溢れる人間でした。
謹んでご冥福をお祈りします。
お疲れ様でした。そしてありがとうございました。




7月21日

無事に7月16日に52歳の誕生日を迎えることができました。
まずは丈夫な体に産んで育ててくれた母に感謝します。
そして家族、友人、仕事の仲間、お客様などなど
生き残ることの大変さを年々感じつつ、皆様の支えがないとここまで来ることはできませんでした。
「ありがとうございます。」これが今の正直な思いです。
このところのツアー続きで、体もだいぶ悲鳴をあげ始めていますが、
なんとか良い演奏が皆様にできるように調整して望んでいます。
岡山のルネスホール、アルフィー、ナルなど、自分のリーダーライブも成功裏に終わり
自分のライブのスタイルでお客様が喜んでもらえることに喜びを感じます。
皆様の楽しかったという笑顔が最大の自分の報酬です。
そんな中、嬉しいニュースが。
好評をいただいたCD「Good Time」と同じメンバーで新作を録音できることになりました。
(ぱちぱちぱち)
録音は秋頃ですが皆様のリクエストも受付中です。
前作同様、楽しく、伸びやかで、深いグルーブのある音楽にしたいと思います。

追悼、ドン・フリードマンさん。
ニューヨーク在住時代、よくセッションや仕事に呼んでいただきました。
テニスのシニアのチャンピオンになるなど、年齢を感じさせないパワーと
いつも理知的で暖かい雰囲気はジャズジャイアンツの名に恥じない振る舞いでした。
2002年にニューヨークのブルーノートに自分のトリオで出演できる機会を得たとき
ピアノをお願いしたら快く引き受けてもらい素晴らしい演奏をしてくれました。
忘れられないのは、キースジャレットのライブ盤があることでも有名なライブハウス
Dear Head Innにドンとマット・ウィルソンのトリオで出演したときのこと。
近所に落雷のために停電となり
ライブを完全アコースティックでロウソクの光のみで演奏することになりました。
譜面も手元も見えないくらい暗かったのですが
お客さんとともにすばらしい集中力で、ライブハウスが音楽の力により
本当に心が一つになったライブがありました。
慎んでご冥福をお祈りします。




6月21日

6月に入ってはいろいろな土地で演奏させていただいています。
昨年とはまた違う人脈の流れで音楽を演奏させていただいて
それを全国の皆様に聞いていただける喜びをかみしめています。
復帰した大西順子トリオ、増尾さんのトリオでの日野さんや貞夫さんとの共演など
自分の能力のギリギリのところを出さなくてはならない演奏が続いていますが
それこそがニューヨークで腕を磨いた意味のある、自分の身の置き方ではないかとも思います。
人生のそういう流れは、自分のコントロールの及ばない範囲のことでもあり
そのためには、日々の努力を怠らない、謙虚であること
誠実であること、コンディションをベストに保つことなど、当たり前のことのようなことに
細心の注意を払わなくてはなりません。
それを打ち破ってきた人びとが長く第一線で活躍できる秘訣かもしれません。
そういった現場を見るにつけ、実は、人々は本当のクリエイティブなものを渇望しているような気がします。

メディアや名声や、表面的な流行に流されやすい時代ですが
それだけでは生きていけないのも人間の性かもしれません。
ジャズという音楽はそういう人びの深層心理に働きかけることのできる数少ない音楽です。
そして、最近の共演者たちの素晴らしいところは、常に世界に目を向けていることで。
日本に住んで日本で演奏しているのですから、日本の人々に満足してもらわなくてはいけないのですが
ややもするると、エンターテイメントという性質から閉鎖的になりやすく
保守的にもなりがちです。
これからの若い世代にも世界に目を向けて、歴史にも目を向けて、王道を歩んでもらいたいです。
自分も努力したいです。王道を歩むこと。簡単ではないですね。




5月27日

5月も終わりに近づき、夏の気配が漂っています。
日によっては暑すぎて、教えに行っている国立音楽大学の教室によっては
冷房がまだ入っていなくて、暑い中演奏をしなければならず、生徒の苛立ちも見えて取れます。
しかし、キューバのミュージシャンは国を挙げてのエネルギー政策のために
一年中冷房も使えない中、真摯に音楽に取り組んでいた様子を思い出すと
日本は恵まれすぎているようにも感じます。あくまで比較ですが。

今月は普段とは少し違うバンドや、同じバンドでも違う環境などで演奏させてもらい
大変、勉強させていただいた気分です。
本当に学ということは心が震えるような瞬間だということを思い出しました。
ギターの増尾好秋さんとのトリオのライブやツアーはドラムの奥平真吾くんのおかげもあって
まるでニューヨークで演奏しているようなバイブレーションが漂っていました。
まさに自然体でジャズの大物との共演や体験を増尾さんから聞くのが
言葉には表せないような財産となりました。
だってソニーロリンズやロイヘインズの素顔に迫る機会なんてそうないものですから。
そして増尾さんのギターのプレイもソニーロリンズの息吹がにじみ出る、まさに本物の質感でした。
6月にはこのトリオに日野皓正さんや渡辺貞夫さんをゲストに迎えてピットインで演奏します。
ワクワクしますね。
5月20日に行われた渡辺香津美ギター生活45周年記念コンサートは予想を上回る盛りだくさんなゲスト
そして演奏の内容でした。
個人的なトピックとしては大先輩の高水健二さんと並んで演奏できたこと。曲によって交代しましたが
2曲ばかり二人同時での演奏もあり、先輩の息吹を感じながら演奏できて刺激的でした。
トピックその2としてはドラマーのオラシオエルナンデスと共演することができました。
一度、ニューヨーク在住時代に共演していますが、その後の彼の活躍は素晴らしいの一言。
すっかり大御所となった彼との再会でしたがとても快く受け入れてくれて
演奏も、世界で活躍するドラマーならではのムードが漂っていました。
リズムのキレ、柔らかさ、重心の低さ、ダイナミクスの大きさ、
何よりも、ものすごいテクニシャンなのにうるさくない。
みんなでグルーブを作る様は高級車に乗っているようでもあります。
ここ数年、ジェフ・ワッツ、デイブ・ウェックル、オラシオと立て続けに共演できて,
自分の普段の演奏の立ち位置があながち間違いでもないことに自信を持つことができるようになりました。
そして最後のトピックは村治佳織さんの復活と、楽しそうな振る舞いが印象的でした。
人は誰でも命の危機まで行くと人生観が変わるといいます。
そういう会話をしたわけではありませんが、ものすごく今を大切にされているように感じました。
オリジナル曲も初披露、アドリブに最後はエレキギターまで。
その他、豪華すぎるぐらいのゲストが入れ替わり立ち替わりのコンサートでしたが
それを全て受け入れて包み込んでします香津美さんの存在と懐の大きさを改めて感じました。
こんなすごい人とグループで一緒に演奏させてもらえて光栄に感じました。

これkらの時代は、自分のことだけではなく、いろんなコラボができてなおかつ良い音楽が創造できる人が
音楽界を引っ張りよくしていくのだろうと思います。自分もそういう人間にならなくては!
残り時間は限られているが。

カラテチョップスの太田でのコンサート、大西順子トリオでのジャズオーディトリアムでの演奏も最高に興奮しました。

そもそも、この宇宙は爆発した時は一つで地球はその一部。
空気も水も大地も、そして植物や動物、みんな無償で与えられたもの。
太陽だってものすごい勢いで誰にも頼まれずに燃え続けて光をくれている。
なのに人間はそれを勝手に自分のものにして利権を主張したり、
利益を求めて争ったりするのは本当にばかばかしいことだと思わないのかな。
音楽なんて無力ではあるけど、本来はそういう与えられたものに感謝するために演奏するものだったはず。
個性とか、名声とかにとらわれて追いかけすぎると本質を見失ってしまうよ。
と、小声でつぶやくのでした。


4月27日

ようやく春も本格的に訪れ、社会にも心機一転の気風が芽生えはじめたというところに
突然、熊本、大分および九州方面に襲いかかってきた地震。
ひどい揺れに度重なる余震で甚大な被害をもたらし、今なお多くの人が不便な生活を余儀なくされていると聞きます。
コミュニケーションの発達した現代でも、災害が起こるとその手段が大幅に奪われ
結局のところ、限られた支援しか離れたところでは出来ません。
一日も早く、通常の平穏な日々が戻る事を祈っております。
一日でもはやく音楽を安心して楽しんでいただける環境になりますように。
私たち音楽家は、良い音楽を演奏できるように準備して常に精進する事も支援の一つではないでしょうか。

偉大な音楽家の訃報も今年に入って増えているような気がします。
希代の天才、プリンスもその一人。
常に、築いた地位や名声、利権などをかなぐり捨てて新しい物を創造していく姿は
現代にあっては稀な姿であり、むしろ爽快なぐらいでした。
そしてそのクオリティの高さは常に目を見張るものがあり
相当な隠れた努力とギリギリまでの思索の果てを感じさせます。
それでいて、無条件に人を楽しませる音の響宴。
真のエンターテイメントの底力を見た思いです。

その偉大な才能を生み出したアメリカと言う国ですが
とても地味ですが、現代ジャズのアルト奏者の第一人者、ヘンリー・スレッギル氏に
ピューリッツア賞が贈られました。
ほとんど日本のメディアには登場しない人物ですが
ちゃんとどういう活動や音楽を演奏しているのかを評価されるところがアメリカらしいです。
もちろんアメリカには負の要素も沢山ありますが
こと芸術分野に関しては、意識の高さを感じます。
我が国にもこのような良識がちゃんと評価されて日の目を見る機会があると良いのですが。

今年に入って偶然からか、そのアメリカにゆかりのある人々の仕事が続いています。
縁とは不思議なもので、去る時もくる時も、何かの大きな流れに乗ってくるようです。
その流れを良い方に持っていき、少しでも、勇気が必要な人の元に届けられますように。

それにしてもマイケル・ジャクソンもデビッド・ボウイもプリンスもいない時代を生きるなんて。
寂しいですね。寂しいというのが人間の本質かもしれません。


3月27日

ようやく春の気配が漂ってきました。
しかし春の足音はきまぐれ。近づいたかと思うと遠のいたり。
春を信じてよいものやら。しかし冬はやっぱり苦手です。

楽しみにしていた自分の「GoodTIme」カルテットのツアーが無事に終了しました。
今回は新曲も交えたりでバンドに新しい風が入ってきてさらに進化したと実感できました。
各地で暖かく迎えていただき、そして喜んでいただきとてもうれしかったです。
メンバーも素晴らしいプレイでした。江藤、秋田、荻原、各氏に感謝です。
そして富士、大阪、豊橋、琴浦と準備していただいたスタッフ、お客様にも感謝です。
早くも再演を希望する声もあり、創造の勇気をいただきました。
指揮者のベンジャミン・ザンダーの言葉に
「成功とは名声や権力ではない。どれだけ輝く瞳があるかだ」とありますが
終演後の皆様の輝く瞳が、僕たちの最大の宝物です。

3月11日には蕨にオープンした新しいライブハウス「OURDELIGHT」にてリーダーライブをやらせていただきました。
とても響きの美しいところで、ピアノの田中菜緒子さん、ドラムの大坂昌彦くんの素晴らしいプレイのおかげで
素晴らしい夜となりました。来ていただいたお客様、本当にありがとうございます。

そして大西順子トリオのツアーがスタートしてひとまず終了しました。
今回は新しいアルバムのレパートリーである菊地成孔さんの楽曲が沢山ありますが
どれも僕の経験した事のない新しいコンセプトでとても刺激を受けています。
リズム、ハーモニーの新しい解釈で、まだまだジャズは発展させられるということを教えていただきました。
演奏するのは至難の業ですが、今後どう発展していくのかがとても楽しみです。
引退し復帰した順子さんの演奏もさらにスケールが大きくなったようで余裕すら感じます。
現代のジャズ界には、音楽界に必要な人材達の、素晴らしき創造の実を
どう皆様の胸に響かせる事が出来るのか、それが演奏家の使命であるように感じます。
人間は人間にふれあう事でしか発展する事が出来ません。
良き発展に向かって、また今日から一生懸命精進します。


3月2日

相変わらずの気温の乱高下。体調管理が大変ですが皆様はお体大丈夫でしょうか?
僕自身は昨年の不調を考えると今年ははるかに元気です。
明日から自分のカルテットでのツアーが始まるのでわくわくしています。
いつでも現在を見つめて活動できることに感謝しています。
現代は情報にあふれていて、すべてが情報のように感じてしまいますが
人間の感性は情報というものでとらえられるものではありません。
喜び、悲しみ、怒り、憂い、慈しみ、そう言う物は情報としては本質はとらえられません。
音楽とは本来、そう言った感情や哀楽というものに寄り添ってあるものです。
芸術とは生きるという、そのような物に活力を与え、ヒントをもたらし、打開する勇気をあたえるものです。
話題の消費、というものに活動の指針がおかれている現在は、時間をかけて内面を探索する事とは相容れません。
どうか、すこしでもそう言った活動をしている音楽家や芸術家が活躍できる社会になりますように。

それはさておき、今年の活動はすこし変化に富んだ物になっています。
先日は辛島文雄さんのレコーディングに参加しました。
ご存知のように辛島さんは現在闘病中ですが、音楽に対する情熱は衰えるところを知らず
ジャズがジャズらしい物として響く事に魂を燃やしていらっしゃいます。
そのプロジェクトに呼んでいただいた事をとてもうれしく思っています。
先に記した、ミュージシャンの使命というような物を感じさせてくれる少ない一人です。
また詳細が発表できる事になったらお知らせしますが是非聞いていただきたい記録です。

最近よく思う事をツイートに記したのですが、ここでもそれを載せておきます。

演奏する上で、一番大切な物は?等身大になる事。上達する上で一番大切な事は?真摯に自分と向き合う事。
それはとても難しく厳しく、そして時には傷つく。それでもそれを乗り越えないと次に進めない。
そしてこれは一生続く物だと覚悟できる強い心が必要。それを楽しめ、なんて。音楽の道。

決して悲観に暮れる事無く前に進みたいと思います。

2月1日

暖冬かと思われた今冬ですが、そうは甘くなく、厳しい寒さ、降雪などが続きますが
みなさま、無事におすごしでしょうか?
無事に普通に暮らせる事に感謝しながら生きていかなくてはと、この頃は強く思います。
その中で、音楽を聴きに足を運んでくれる皆様には本当に感謝します。

今年は年始からピットインの森山威雄さんのライブに呼んでいただき
幸先の良いスタートを迎える事ができました。
そのライブでは闘病中の辛島さんも全面参加で、とても力強い演奏を聴かせてくれました。
僕が辛島さんのトリオに在籍した7年間の充実感を思い出させるプレイに感動しました。
ジャズへの、そして音楽への熱い情熱を後に続く者が受け継いでいかなくてはなりません。
そのためには辛島さんにもっと長く演奏を続けていただかなくては。

年末の忙しさから解放されて、少しゆっくり過ごせるかと思いきや、
数々のセッションのために練習をしなくてはならず
かえって自分をより高めるきっかけとなりました。
そんな中で、自分のカルテットのレパートリーも一気に増量。
3月のツアーに備えて、バンドの空気も刷新する事が出来ました。
お茶の水のライブには沢山の人に来てもらいうれしかったです。
そのカルテットも含め、今年も良い音楽を奏で
沢山の人の心の支えとなっていきたいと思いますので
どうぞよろしくお願いします。


1月1日

みなさま、明けましておめでとうございます。
今年も、心を込めてベースを、そして音楽を演奏していきたいです。
激動の2015年でしたが、皆様の応援のお陰で沢山の感動をいただきました。
2016年もよろしくお願いします。


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